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歴史から読み解く「人事の世界」

読了目安:7分

第1回 三国志時代の「人材評価」制度(前編)

終身雇用の崩壊やAIの台頭により、人事の土台が大きく揺らぐ時代を迎えている。だが、これは現代特有のものではない。歴史を遡れば、人間と組織が直面してきた課題の本質は今も昔も大きく変わらない。過去の変革期における試行錯誤や人間模様からこそ、現代の組織課題を打ち破る「人事のヒント」が見えてくるかもしれない。

新シリーズ「歴史から読み解く人事の世界」。第1回は、三国志研究の第一人者である早稲田大学の渡邉義浩教授が登場。混迷を深めた約1800年前の中国・三国志の時代、人をいかに評価して登用するかをめぐり、権力者と地方の知識人は議論と闘争を繰り返したとされる。はたして、それはどのようなものだったのか。

第1回では、公式の評価制度「郷挙里選(きょうきょりせん)」の形骸化と、民間の「評判」が国家の仕組みをも凌駕していった実態に迫る。歴史の知恵を通して、現代の人事や組織づくりに通じる本質を解き明かしていく。(文・佐々木広人、写真・STUDIO ZEFF 加藤大樹)

民間の人事評価システム「月旦評」はコミックスでも有名なシーンだ Ⓒ横山光輝・光プロ/潮出版社

後漢を200年支えた「郷挙里選」 人材評価の基準は親孝行と清廉潔白

時は三国志の舞台の始まりでもある「後漢」の時代。歴代政権に比べて武力が弱いながらも、約200年間、政権を維持できたのだが、その核心に「郷挙里選」という強固な官僚登用システムがあったーーと渡邉教授は指摘する。郷挙里選は、地方の有能な人物を官吏(役人)として中央に推薦・登用する制度で、従前の貴族的な特権による登用ではなく、末端行政単位(郷・里)から人材を推薦させるシステムだったという。

「後漢は儒教を支配の中心に据えた国家で、官僚登用の主要ルートが郷挙里選ですが、なかでも重視されたのは『孝廉』。親孝行の『孝』と清廉潔白の『廉』です。

本当に親孝行で金に汚くないかを証明するため、彼らは親がまだ元気なうちから巨大な墓と豪華な棺を用意し、亡くなると惜しみなく金銀財宝とともに葬儀を行いました。周囲からは『あそこまで財を注ぎ込むとは親孝行者だ、金への執着もない清廉さの証だ』と評され、その評判を得た者が郷挙里選で

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WRITTEN BY

渡邉義浩

早稲田大学 漢学研究所 所長・教授

文学博士。三国志学会副会長を務めるなど中国古代史研究の第一人者として知られる。学術研究にとどまらず精力的に発信を行い、映画『レッドクリフ』やドラマDVD『三国志 Three Kingdoms』の日本語版監修や、新潮文庫版・吉川英治『三国志』の監修など、歴史を題材とした数々の有名作品で監修や考証も手掛けている。著書多数。

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