NTTデータグループのコンサルティング会社フォーティエンスコンサルティング株式会社(旧社名:株式会社クニエ、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山口 重樹、以下フォーティエンス)は2026年11月4日、TOPIX100構成企業を対象とした人的資本経営の開示実態に関する調査レポート「TOPIX 100にみる人的資本経営の現在地」を発表した。分析対象とした2026年3月期決算の82社のうち、必要な人材要件とその確保・育成方針までを一貫して説明する開示をしていた企業はわずか6社(7.3%)にとどまり、多くの企業が人事施策や指標の開示段階にとどまっていることが明らかになった。
調査の背景:2026年3月期から始まった開示強化
2026年2月の制度改正により、2026年3月31日以降に終了する事業年度の有価証券報告書からは、経営戦略と連動した人材戦略や、それに基づく報酬方針の記載が求められるようになった。3月期決算企業にとっては、今回が改正後初めての開示となる。今回の調査は、この最初の開示がどこまで「戦略と人材の接続」を示せているかを検証したものだ。
調査方法
調査対象は、2025年10月31日時点でTOPIX100を構成する企業のうち3月期決算の82社(非3月期決算の18社は対象外)。2026年7月5日までに提出が確認された有価証券報告書の本文のみを分析し、統合報告書や自社サイトの記載は対象外としている。評価には、フォーティエンスコンサルティングが独自に設計した4段階以降モデル・8項目の判定基準を用い、生成AIによる一次判定後、判断が分かれやすい事例は人の目でレビューし、82社中30社は有価証券報告書原文と抜き取り照合も行っている。
主な調査結果
段階別の分布は、最も基礎的な「人事施策の運用」にとどまる段階Aが76社(92.7%)、「経営戦略と人材要件の連動」まで踏み込んだ段階Bが5社(6.1%)、「人材要件を満たす人材戦略」まで進んだ段階Cが1社(1.2%)、「人的資本情報に基づく経営判断」に至った段階Dは0社(0.0%)だった。
開示内容を要素別に見ると、注力事業・成長領域を明示していた企業は51社(62.2%)あったものの、その事業に必要な人材像まで具体的に示していたのは20社(24.4%)、さらに両者を結びつける理由まで説明していたのは11社(13.4%)にとどまった。3要素すべてを満たした企業は6社(7.3%)のみとなった。また、必要人材数や比率そのものは8社が開示していたが、うち6社は「なぜその人材が必要か」の説明を欠き、段階Aにとどまっている。
レポートでは、段階Aにとどまる企業に共通する開示パターンとして、具体的な職種・スキルを示さない「汎用人材型」、特定事業ではなく全社員に共通する行動特性を示すにとどまる「全社員対象型」、「人材育成が不可欠」といった宣言のみで理由の説明を欠く「宣言どまり型」の3つを挙げている。
HR担当者への示唆
フォーティエンスコンサルティングは、改善の第一歩として、まず重点事業を一つ選び、その事業が何を実現しようとしているか、そのためにどんな職種・スキルの人材が必要か、どう確保・育成するかを一気通貫で説明できる状態をつくることを提案している。あわせて、必要人材数と現状とのギャップ、解消までの時間、確保・育成の進捗を把握し、人材投資の優先順位づけや事業計画・投資配分の見直しに活用することを推奨している。唯一段階Cに達した企業は、経営戦略・人事戦略・主要施策・進捗指標を対応させた一覧表を示している。これにより重点事業と人材の関係が伝えやすくなる。
開示制度への対応が本格化するなかで、単に項目を並べる開示ではなく、事業戦略と人材戦略の関係を明示することが、今後の人的資本経営開示における共通の課題になりそうだ。