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戦略は、なぜ現場に伝わらないのか?――「意味の断絶」~人事は「経営戦略の実装者」になれるか②~

読了目安:7分

「経営戦略の中身は知っています。こんなに忙しいのに、新規事業に力を入れる戦略っておかしいですよね?」。ある企業の社員から、こんな質問をされた。

この企業では、経営層が新規事業の強化を重点戦略として掲げ、繰り返し社員に説明していた。ところが、現場からはこうした疑問が出てくる。経営層は「これだけ説明しているのに、なぜ理解してもらえないのか」と感じ、現場は「方針は分かるが、どうも納得できない」と感じている。

経営層は伝えたつもり、現場は分かったつもり。それなのに、なぜか話がかみ合わない。そして、こうしたすれ違いは多くの企業で起きている。

前回は、人的資本経営において人事が「経営戦略の実装者」になる必要性と、戦略実装を阻む「5つの断絶」を紹介した。今回は、その出発点となる「意味の断絶」に焦点を当てる。

第一回はこちら

同じ戦略なのに、見えている景色が違う

「意味の断絶」とは、経営層が戦略に込めた意図や目的が、現場に正確に伝わっていない状態を指す。言葉は届いていても、受け取る意味が違うのだ。

例えば「既存事業から新規事業への転換」という経営戦略。経営層は、現在の事業で生み出した利益を成長領域に投資し、将来の収益構造を変えたいと考えている。しかし現場では、「今の事業を重要視していないのか」「これまでの努力は評価されなくなるのか」と受け止められることがある。

「高付加価値型ビジネスへの転換」も同様だ。経営層は、価格競争から脱却し、顧客の課題解決によって収益性を高めたい。しかし現場では「もっと高い商品を売れということか」と受け取る。経営層にとっては事業モデルの転換でも、現場には営業目標の引き上げに聞こえてしまう。

こうした違いは、社員の理解力や意欲の問題ではない。経営層は市場環境、競争構造、将来の収益を見ている。一方、現場は目の前の顧客、日々の業務、今期の目標数字を見ている。立場が違えば、同じ言葉でも受け取り方が違うのは当然だ。

ここで人事に考えて

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WRITTEN BY

松井達則

株式会社ジェック 代表取締役社長

立教大学文学部卒業。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士前期課程終了。修士(経営管理学)。アメリカン・エキスプレスでの管理職経験を経て、株式会社ジェックに入社。これまでに、100社以上の組織変革・人材開発を支援。「戦略の実装」をテーマに、経営戦略を現場の行動レベルまで徹底的に落としこむコンサルティングを得意としている。2018年にコンサルティング部門を統括する取締役、2023年に代表取締役に就任。主な著書に、『メモテク』(かんき出版)、『価値を創造するチームのつくり方』(幻冬舎)等がある。

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