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人事のキャリアは“線”ではなく“面”で描け

読了目安:7分

「仕事は充実している」「けれど、この先もずっと同じことを続けるのかと思うと、不安になる......」

人事の現場で、こうした声を耳にすることは珍しくありません。採用、研修、人事企画、労務̶̶どの領域でも、まずは一つの分野で経験を積み、担当者から責任者へとステップアップしていく。この歩み方は、人事の世界では典型的なキャリアのパターンです。

だからこそ、「次にどんな経験を積むべきか」「今の専門性は、他の領域や将来的なキャリアにどうつながるのか」と悩む人事パーソンも少なくありません。なかには、思い切って異動や転職を選ぶ人もいるでしょう。

こうした悩みに対して、「HRCareerMap(※1)」という視点から捉え直すと、一つのヒントが見えてきます。それは、キャリアを一直線の“線”として描くのではなく、経験を広げていく“面”として捉える、という発想です。

(※1)HRCareerMap:人事プロフェッショナルのためのオンライン学習プラットフォームを運営するAIHR(AcademytoInnovateHR)が提唱する考え方

なぜ、人事キャリアは行き詰まりやすいのか

多くの人事パーソンがこうした悩みを抱えるのは、個人の能力や意欲の問題ではありません。背景にあるのは、日本の人事部門が抱える構造そのものだと考えます。

第一に、人事部門は「余剰を持たない組織設計」になっている点です。近年は、AIやHRテックによる効率化の流れもあって、人事は最小限の人数で回すことが求められます。結果、「業務を止めないこと」が最優先され、担当は固定されやすく、育成目的のローテーションも抑制されがちです。

第二に、人事の仕事は機能別に分断されやすい点です。採用、研修、労務、制度企画などはいずれも「人事」ですが、それぞれ専門性を求められるものです。そのため、一つの領域で専門性を深めるほど、他の領域に移りにくく、結果としてキャリアの選択肢が狭まるという逆説が生まれます。

第三に、評価が「安定運用」に寄りやすい点です。人事は成果が見えにくい一方、失敗は目立ちます。そのため、暗黙のうちに「変えないこと」「波風を立てないこと」が価値として組み込まれがちです。新しい挑戦も、“姿勢”としては賞賛されても、安定的な運用や明確な成果につながらなければ評価に結びつきにくい傾向があります。

こうした構造のもとでは、「特定の領域にとどまり続けること」が、最も無難で合理的な選択になります。結果として、多くの人事パーソンが試行錯誤を重ねながらも、どこかで行き詰まりを感じてしまうものと考えます。

「動けない」のではなく「方向性が見えない」

ここまで読むと、「構造がここまで強いなら、行き詰まり感を解消するのは難しいのではないか」と感じる方もいるでしょう。

確かに、構造そのものを変えるのは簡単ではありません。しかも人事の仕事は、それぞれの領域で専門性が求められるため、業務はサイロ化しやすく、全体を俯瞰する機会も限られがちです。結果、キャリアを積み重ねようとしても、「動けない」のではなく、「どの方向に動けばよいのかわからない」状態に陥りやすくなります。

だからこそ重要なのは、この構造を嘆いたり、無理に変えようとすることではありません。この構造を前提に、今の経験をどう広げ、どうつなげていくか、を考えること。すなわち、キャリアを「一本の線として伸ばしていく」のではなく、「面として捉え、関係する領域を少しずつ広げていく」発想が重要になってきます。

このとき、思考の補助線としてAIHRが提示する「HRCareerMap」は有効な手がかりになります。

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WRITTEN BY

太田 昂志

グロービス経営大学院 専任教員

大阪大学卒業。システムインテグレーター等を経て、株式会社ゆめみに転じる。CHRO、取締役、上席執行役員を歴任。DX・内製開発支援の分野でリーディングカンパニーとしての成長に貢献。「働きがいのある会社」アワード各賞の受賞にも導いた。その後、外資系コンサルティングファームとの戦略的パートナーシップの締結および経営統合プロジェクトを主導。グロービス経営大学院専任教員としては、人事組織系科目の教鞭を執るほか、教育プログラムの開発も担う。

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